2025/02/07
派遣社員を戦力にする!受け入れ時の注意点とチェックリスト
近年、多様な働き方が広がる中で、派遣社員の活用は多くの企業にとって重要な戦略となっています。しかし、派遣社員の受け入れには、正社員とは異なる注意点や手続きが必要です。
では実際に派遣社員の受け入れが決まった際、どのような点に留意しておく必要があるのでしょうか。
この記事では、派遣社員をスムーズに受け入れるために、人事担当者が押さえておくべき注意点をご紹介します。
1.派遣社員を受け入れる前に…
派遣社員は自社の社員ではありませんが、社内で自社の社員たちと共に働く仲間になります。派遣社員を受け入れる前の準備は、スムーズな受け入れと派遣社員の活躍に繋がる重要なプロセスです。以下に、具体的な準備項目とそのポイントをご紹介します。
①社内で確認しておくこと
派遣社員がスムーズに業務を進めるためには、社内での役割分担を明確にしておく必要があります。特に、以下の3つの役割については、派遣法に基づき、担当者を設置し、契約書に記載する必要があります。
指揮命令者 |
派遣社員に具体的な業務指示を出す担当者です。 業務内容や進捗状況などを把握し、適切な指示を与える必要があります。 |
派遣先責任者 |
就業環境の整備やサポートを行う担当者です。 派遣社員が派遣先企業で円滑に業務を遂行できるように管理を行います。 |
苦情処理担当者 | 派遣社員から就業に関する苦情を受け付け、対応する担当者です。 |
②業務に必要な物品を揃える
社内で必要な物品は、事前に余裕をもって確認・準備しておきましょう。派遣社員側で用意すべきものがあれば、派遣会社を通して事前に伝えておくこが大切です。
≪ 準備物の一例 ≫ ・IDカード ・身分証 ・パソコン機器一式 ・会社携帯 ・業務用機器、備品、事務用品 ・制服、作業着 ・マニュアル、社内ルールブック ・名刺 ・組織図や座席表、フロアマップ、社内連絡先の一覧など |
③派遣会社と連携して整えておくこと
派遣社員の受け入れをスムーズに行うためには、派遣会社との密な連携と、社内での適切な準備が不可欠です。
準備①:派遣契約の締結
派遣契約書の内容を十分に確認し、不明な点は派遣会社に問い合わせましょう。派遣契約期間、業務内容、就業時間、給与、福利厚生など、重要な項目を確認します。
また、派遣先から提供する情報や通知書について、派遣会社と連携して準備します。
準備②: 保険適用状況の確認
派遣社員の各種保険(雇用保険、健康保険など)の加入状況、雇用保険法、健康保険法などの法令遵守状況について、を派遣会社に確認します。
準備③:派遣先管理台帳の作成
派遣法に基づき、派遣先管理台帳を作成します。派遣先管理台帳には、派遣社員ごとの各種保険加入状況、就業日・労働時間などを記載します。
法定記載事項を漏れなく記載し、派遣契約終了後も3年間保管する義務があります。
2.派遣社員を受け入れる環境を整える
派遣社員を受け入れるにあたり、企業は様々な点に注意し、適切な受け入れ環境を整備する必要があります。企業が派遣社員を受け入れる前に職場環境を整えることは、派遣社員がスムーズに業務を開始し、最大限に能力を発揮するために非常に重要です。
①物理的な環境整備
先ほどの明記した準備物の一覧を参考に、デスク、椅子、PC、モニターなど、業務に必要な設備を準備しましょう。
業務で使用するソフトウェアやシステムのアカウントを発行したり、社内ネットワークへのアクセス権限を付与したりして、初日からスムーズに業務を開始できるようにしておきましょう。制服や作業着が必要な場合は、サイズを確認し、用意しておきましょう。
②制度・ルールの整備
派遣社員にも適用される就業規則の内容を明確化しておきましょう。
今後、共に働く派遣社員には労働時間、休憩時間、休日、有給休暇などについて、分かりやすく説明しましょう。
また、社内での服装規定や喫煙ルール、休憩時の過ごし方、情報セキュリティに関するルールや、社内システムの利用方法なども事前に共有しておくことが大切です。
派遣社員が利用できる福利厚生制度があれば、そちらの内容も説明しておきましょう。
③受け入れ体制の構築
派遣社員の受け入れを社内全体に周知し、協力を呼びかけます。
派遣社員が就業を開始することを社内に周知することは、スムーズな受け入れと協働のために非常に重要です。
周知が不十分だと、派遣社員が出社した際に、社員がどのように対応すればよいか分からず、派遣社員に不安感を与えてしまう可能性があります。
また、派遣社員の教育・指導担当者を決め、業務内容や目標を共有しましょう。派遣社員がスムーズに業務を開始するために、必要な研修や教育を実施できるよう環境や人員を整えておきましょう。
3.知っておきべき派遣のルール
派遣社員を受け入れる際には、様々なルールを理解しておく必要があります。禁止行為や注意しなければいけないルールもあるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
①派遣労働法
労働者派遣法は、派遣社員の権利保護と適切な就業条件の確保を目的とした法律です。
(1)派遣契約 派遣会社と派遣先の間で、派遣契約を締結する必要があります。契約書には、業務内容、契約期間、就業時間、給与、福利厚生などの項目を明記する必要があります。
(2)就業条件の明示 派遣社員に対し、就業条件(業務内容、就業場所、労働時間、休憩時間、休日、給与など)を書面で明示する必要があります。
(3)派遣先管理台帳 派遣先は、派遣社員に関する情報を記載した派遣先管理台帳を作成・保管する必要があります。
(4)派遣元責任者 派遣先責任者:派遣会社と派遣先は、それぞれ責任者を配置し、派遣社員の管理や監督を行う必要があります。 |
②派遣社員の特定行為の禁止
派遣先企業は、派遣社員を指名することができません。
また、事前の書類審査や面接も禁止されています。原則として派遣社員の選考は派遣会社が行います。ただし、紹介予定派遣については、直接雇用が前提となっているため、この限りではありません。
③派遣期間の制限
派遣社員の派遣期間には、原則として3年間の制限があります。
3年を超えて派遣社員を受け入れる場合は、派遣先の事業所単位で過半数労働組合等への意見聴取などの手続きが必要となります。個別契約で3年を超えて派遣社員を受け入れることは原則できません。
④業務内容の制限
派遣社員が従事できる業務には制限があります。
以下の業務は、派遣社員が従事することが禁止されています。以下の業務以外にも、一部の業務については、派遣社員が従事できる条件が定められています。
・建設業務 ・警備業務 ・港湾運送業務 ・医療関連業務(一部) ・弁護士・税理士などの士業 |
⑤取引先など自社以外に派遣社員を派遣することの禁止
派遣社員を取引先など自社以外の企業へ派遣することは、二重派遣となり労働基準法や職業安定法に違反します。
⑥労働契約申込みみなし制度
通常、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の企業で働きます。しかし、違法な派遣が行われた場合、派遣社員の雇用が不安定になる可能性があります。
そこで、労働契約申込みみなし制度は、派遣社員の保護を目的として、「違法派遣が行われた時点で、派遣先企業が派遣社員に直接雇用を申し込んだ」とみなす制度のことです。
どんな時に適用されるのか? ・派遣禁止業務に従事させた場合(例:建設業務、警備業務など) ・無許可の派遣会社から派遣社員を受け入れた場合 ・派遣期間制限を超えて派遣社員を受け入れた場合 ・偽装請負の場合 |
この制度は、違法派遣を防止し、派遣社員の権利を保護するために設けられました。
労働契約申込みみなし制度が適用されると、派遣先企業は派遣社員に対して、派遣会社との雇用条件と同一の条件で雇用する義務が生じます。
つまり、派遣社員は派遣先企業に直接雇用されることになり、雇用が安定することになります。
⑦派遣社員の権利
派遣社員には、労働基準法や労働契約法など、労働者としての権利が保障されています。
派遣社員も、正社員と同様に、最低賃金、労働時間、休憩時間、有給休暇などの権利を有します。派遣社員に対する差別的な扱いは禁止されています。
4.まとめ
多様な働き方が広がる現代において、派遣社員の活用は多くの企業にとって欠かせない戦略となっています。
しかし、派遣社員の受け入れは正社員とは異なる注意点や手続きが必要であり、円滑な協働のためには事前の準備が必要不可欠です。事前に、労働者派遣法をはじめとする様々なルールを理解しておく必要もあります。
派遣社員の受け入れには細かいルールや規定が数多く存在し、最初は複雑に感じられるかもしれません。しかし、これらのルールはすべて、派遣社員が安心して働き、その能力を最大限に発揮できる環境を作るために設けられています。
派遣社員は企業にとって、心強い戦力となる存在です。この記事で紹介した様々な注意点を参考に、貴社にとって最適な派遣社員受け入れ体制を構築し、派遣社員を貴重な戦力として活用してください。
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