2025/02/21投稿者:広報担当

【派遣の受け入れ】指揮命令者とは?役割を解説!

派遣社員の受け入れを進めるにあたり、以下の3つの役割担当者を設置する必要があります。

 

・派遣先責任者

・指揮命令者

・苦情申出先担当者

 

これらの役割は、派遣社員が円滑に業務を行えるように設置されるものであり、派遣法に基づいて契約書に記載する必要があります。そのため、派遣を受け入れる際には必ず決めておく必要があります。

派遣を受け入れる際に知っておきたい注意点とは?

 

本記事では、これらの役割のうち「指揮命令者」に焦点を当て、その役割と担当者を選ぶ際のポイントや注意点などを解説します。

 

 

1.指揮命令者とは?

派遣先責任者とは、派遣社員が実際に働く会社(派遣先)で、派遣社員に対して業務の指示や指導を行う人のことです。

労働者派遣法で定められた役割の一つで、派遣社員を受け入れる企業(派遣先企業)が設置する必要があります。

 

労働者派遣法において、指揮命令者に関する明確な条文はありません。

しかし、労働者派遣法第26条では、派遣先企業が派遣社員に対して適切な指揮命令を行う義務が定められています。

 

また、指揮命令者を設置しなかった場合、労働者派遣法に違反することになり、行政指導や罰則を受ける可能性があります。

 

【参考】労働者派遣法 │ 厚生労働省

 

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2.指揮命令者の役割

では、指揮命令者とは具体的にどのような役割を担うのでしょうか?指揮命令者の主な役割は以下の通りです。

 

①派遣社員への業務指示・指導

派遣契約の内容を理解し、その範囲内で具体的な業務内容を指示します。

業務の優先順位や期日、成果物などを明確に伝え、派遣社員が迷うことなく業務に取り組めるようにします。

また、契約範囲外の業務を指示しないように注意します。

派遣契約で定められた業務内容、就業場所、就業時間、休憩時間、休日などを遵守し、契約の変更が必要な場合は、派遣元企業と協議の上、適切な手続きを行います。

 

②業務遂行状況の把握

派遣社員の業務遂行状況を定期的に確認し、進捗状況や課題を把握します。

派遣社員からの報告や相談に耳を傾け、状況を把握し、必要に応じて業務の改善策を検討し、実行します。

 

③派遣社員からの質問や相談への対応

派遣社員からの質問や相談には、必要な情報を提供したり、アドバイスを行ったりして、丁寧かつ迅速に対応します。解決が難しい問題の場合は、派遣元企業と連携して対応を検討します。

 

④派遣社員の勤怠管理

派遣社員の出勤・退勤時間、休憩時間、残業時間などを記録・管理します。また、派遣社員の勤怠状況を派遣元企業に報告します。

 

⑤派遣社員の安全衛生管理

派遣社員が安全に業務に取り組めるよう、職場環境を整備します。また、安全衛生に関する教育や研修を実施します。

 

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3.指揮命令者になるには?

指揮命令者になるために、法律で定められた特別な資格や条件はありません。しかし、派遣社員に対して適切な指示や指導を行い、円滑な業務運営をサポートするためには、以下の様な能力や経験が求められます。

 

①求められる能力・経験

(1)業務に関する知識

派遣社員に指示する業務内容を理解している必要があります。

 

(2)コミュニケーション能力

派遣社員に分かりやすく指示を伝え、質問や相談に適切に対応できる能力が必要です。

 

(3)指導力

派遣社員の能力を引き出し、育成する能力が必要です。

 

(4)問題解決能力

業務上の問題やトラブルが発生した場合に、適切な解決策を見つけ出す能力が必要です。

 

(5)労務管理の知識

労働基準法や派遣法など、労働関係法規に関する基本的な知識が必要です。

 

(6)安全衛生管理の知識

派遣社員の安全衛生に関する知識が必要です。

労働者派遣法では、指揮命令者の人数について具体的な規定はありません。

しかし、派遣社員の人数や業務内容、事業所の規模などを考慮して、適切な人数の指揮命令者を配置する必要があります。

 

 

②ほかの役割と兼任できるか?

指揮命令者は同じく法律で定められている「派遣先責任者」「苦情処理担当者」と兼任することができます。ただし、いくつかの注意点があります。

 

〈 派遣先責任者と兼任する場合 〉

派遣先責任者は、派遣社員の就業環境の整備や派遣元企業との連絡調整などを行う役割であり、指揮命令者と兼任することができます。ただし、派遣先責任者の業務量が多い場合は、兼任が難しい場合があります。

 

〈 苦情処理担当者と兼任する場合 〉

苦情処理担当者は、派遣社員からの苦情に対応する役割であり、指揮命令者と兼任することは可能ですが、望ましくないとされています。なぜなら、指揮命令者は派遣社員と密接な関係にあるため、苦情の対象となる可能性があるからです。

 

 

③指揮命令者になるためのステップ

STEP1:担当する業務に関する専門知識や、労働者派遣法などの関連法規に関する知識を習得します。

STEP2:指揮命令者としての業務をスムーズに行うためには、実務経験があると役立ちます。派遣社員が担当する業務を経験したり、OJTで先輩社員から指導を受けたりすることで、必要なスキルを身につけることができます。

STEP3:派遣先企業によっては、指揮命令者向けの研修を実施している場合があります。積極的に参加し、必要な知識やスキルを身につけましょう。

STEP4:派遣先企業の事業主や人事担当者によって、派遣社員の業務遂行状況を把握し、適切な指示や指導を行う能力ががあると認められた人が指揮命令者として選任されます。

 

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3.指揮命令者が注意したいポイント

指揮命令者は、派遣社員に対して業務指示や指導を行う上で、様々な点に注意する必要があります。以下に、特に注意すべきポイントをまとめました。

 

①派遣社員の権利を尊重する

派遣社員も労働者であり、労働基準法などの労働関係法規が適用されます。

派遣社員であることを理由に、賃金、昇進、教育訓練、福利厚生などで差別的な扱いをしてはなりません。例えば、派遣社員も、一定期間勤務した場合、有給休暇を取得する権利があります。派遣社員の権利を尊重し、不当な扱いをしないように注意しましょう。

 

契約範囲外の業務を指示しない

指揮命令者は派遣契約で定められた業務内容、就業場所、就業時間、休憩時間、休日などを遵守する必要があります。派遣契約書の内容を十分に理解し、契約範囲外の業務を指示しないように注意しましょう。

また、派遣社員がどんな業務を誰の指示のもと行うかを周知しておきましょう。そうすることで、派遣社員にさせてはいけない業務を知らずに依頼してしまうなどのトラブルを防ぐ効果があります。

 

③契約内容を話さない

派遣社員との契約内容に関するやり取りは、原則として派遣元企業が担当します。

そのため、指揮命令者は派遣契約の内容について、派遣社員と直接話すことは避けるべきです。派遣社員の雇用主は派遣会社であり、雇用条件や契約期間なども派遣社員と派遣会社の間で取り交わされる契約によって定められます。派遣先企業である指揮命令者は、これらの契約内容について直接関与する立場にはありません。

もし派遣社員から契約内容に関する質問や相談があった場合は、派遣元企業に連絡し、対応を依頼するようにしましょう。

 

 

4.まとめ

この記事では、派遣社員受け入れに不可欠な役割の一つ、「指揮命令者」に焦点を当て、その役割、選任のポイント、注意点などを詳しく解説しました。

指揮命令者は、派遣社員が安心して業務に取り組めるよう、そして派遣先企業が円滑に業務を進めるために、まさに「橋渡し」となる存在です。業務指示や指導といった日常的な業務サポートに加え、派遣契約内容の遵守、派遣社員の権利擁護、安全衛生管理など、その責任は多岐にわたります。

適切な人材を配置し、適切な教育・研修を行うことで、派遣社員の能力を最大限に引き出し、企業全体の生産性向上に繋げることが可能となります。派遣社員を受け入れる企業は、指揮命令者の重要性を再認識し、適切な人員配置とサポート体制を構築することが重要です。

 

この記事が、派遣社員の受け入れを検討している企業、そして既に派遣社員を受け入れている企業にとって、指揮命令者の役割理解を深め、より良い関係構築の一助となれば幸いです。

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