2025/04/04投稿者:スタッフ

派遣の特定行為とは?禁止の背景や注意点を分かりやすく解説

企業が派遣社員を受け入れる際に最も注意すべきポイントの一つが、「派遣の特定行為の禁止」 です。しかし、「事前面接をしてはいけない」「派遣社員を指名してはいけない」と言われても、なぜそれが違法なのか、どのように人材を選べばよいのか 迷う企業も多いのではないでしょうか?

 

実は、派遣法を知らずに無意識のうちに違反してしまい、行政指導を受けたり、最悪の場合、派遣社員の受け入れを停止されてしまったりする企業も少なくありません。

また、事前面接ができないことで、スキルや適性のミスマッチが発生し、「期待していた人材が来なかった」といったトラブルにつながることもあります。

 

では、企業はどうすれば法令を遵守しながら、求めるスキルを持った派遣社員を適正に受け入れることができるのでしょうか?

本記事では、派遣の特定行為のルールや、企業が違反を避けるための実践的なポイント について詳しく解説します。

「知らなかった」では済まされない派遣法の基本を理解し、企業が安心して派遣社員を活用できる方法を一緒に学んでいきましょう。

派遣社員を受け入れる際の注意点とは?

 

 

1. 派遣の特定行為の禁止

企業が派遣社員を受け入れる際に遵守しなければならない法律の一つに、「派遣の特定行為の禁止」 があります。このルールを正しく理解しないまま派遣社員を受け入れると、意図せず法令違反を犯し、行政指導や最悪の場合、事業停止命令などのリスクを負う可能性があります。

 

1-1. 派遣の特定行為とは?

「派遣の特定行為」とは、労働者派遣法 において、派遣先企業が行ってはいけない行為として定められています。特に重要なのは以下の2つです。

 

◆事前面接の禁止(労働者派遣法第26条)

企業が派遣社員を選考するための面接や試験を行うことは禁止されています。

 

◆派遣社員の氏名特定の禁止(同法施行規則第18条の2)

企業が派遣契約締結前に派遣社員の氏名を指定することは禁止されています。

 

このルールを守らなければ、企業は行政指導や指名公表の対象となり、悪質な場合は労働者派遣事業の停止命令を受ける可能性があります。

 

1-2.なぜ派遣の特定行為は禁止されているのか?

派遣の特定行為が禁止されている背景には、派遣制度の趣旨と、直接雇用との違いがあります。

 

◆ 労働者派遣制度の趣旨

労働者派遣制度は、「雇用の流動性を高めるとともに、企業の多様な人材ニーズに対応するための仕組み」として制定されました。しかし、派遣社員が「事実上の正社員選考」に利用されてしまうと、派遣本来の目的が損なわれ、労働市場の公平性が崩れる ことになります。

そのため、企業が事前面接を実施したり、特定の個人を指名して派遣契約を結んだりする行為は禁止されているのです。

 

◆ 直接雇用と派遣の違い

労働者派遣と直接雇用の最も大きな違いは、雇用契約の主体がどこにあるか です。

直接雇用の場合:企業(派遣先)が労働者と直接雇用契約を結ぶ

派遣の場合:派遣元(派遣会社)が労働者と雇用契約を結び、企業(派遣先)は労働者に業務指示を行うのみ

もし企業が派遣社員に対して事前面接を行い、選考を通じて特定の労働者を指定するとなると、実質的には直接雇用と同じプロセス になってしまいます。これは労働者派遣制度の趣旨に反するため、法律で禁止されているのです。

 

1-3.違反するとどうなる?企業が直面するリスク

派遣の特定行為を行うと、企業は以下のような法的リスクに直面します。

 

◆ 行政指導・指名公表

厚生労働省や労働局から行政指導を受けることになり、改善が見られない場合は企業名が公表 されることがあります。これにより、企業の信用が低下し、取引先や求職者からの信頼を損なう 可能性があります。

 

◆労働者派遣事業の停止命令

特に悪質なケースでは、労働者派遣法第14条 に基づき、派遣事業の一時停止や許可取り消しの処分を受けることがあります。派遣社員の受け入れができなくなるだけでなく、既存の派遣契約にも影響が出るため、企業の事業運営に大きな支障をきたす ことになります。

 

◆ 契約トラブルの発生

派遣会社との契約違反により、派遣契約の打ち切りや、損害賠償請求を受けるリスクもあります。特に、違反行為が継続的に行われた場合、優良な派遣会社との取引ができなくなる可能性 もあります。

 

1-4.企業が遵守すべき基本ルール

企業が派遣社員を適切に受け入れるためには、以下の点を遵守する必要があります。

  • 派遣契約を締結する際、氏名ではなく業務要件を明確にする
  • 求めるスキルや業務内容を事前に派遣会社と共有する
  • 事前面接を行わず、派遣会社による選定を尊重する
  • 派遣会社がスキルマッチングを行うプロセスを理解する
  • 派遣社員への指示は契約範囲内に留める
  • 業務内容を逸脱しないよう、管理者を適切に配置する
  • 派遣期間中の直接雇用誘引は禁止
  • 派遣期間満了前に企業が直接雇用を打診する行為は違法

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2. 派遣の特定行為とは?企業が注意すべきポイント

派遣の特定行為とは、派遣社員を受け入れる際に企業が行ってはいけない行為のことを指します。これらは、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律) によって明確に規定されており、違反すると行政指導や派遣事業の停止といった重大なペナルティ を受ける可能性があります。

 

2-1.労働者派遣法における「特定行為」とは?

労働者派遣法では、派遣契約の適正化を図るために、企業(派遣先)が派遣社員に対して行ってはいけない行為を定めています。主な特定行為は次のとおりです。

 

(1)事前面接の禁止(労働者派遣法第26条)

企業が派遣契約を結ぶ前に、派遣社員の面接や試験を実施することは禁止されています。

 

<禁止される行為の例>

  • 派遣契約前に派遣社員と面接を行う
  • 筆記試験や適性検査を課し、合否を決める
  • 経歴書をもとに、企業側が直接人選を行う

これらの行為は禁止されているため、企業は派遣会社が提供する「スキルシート」や「業務経験の概要」などの情報をもとに判断する必要があります。

 

<例外として認められるケース>

 一部の専門業務(紹介予定派遣など)では、一定の条件下で事前面接が認められています。しかし、一般の労働者派遣では原則禁止 であるため注意が必要です。

 

(2)氏名の特定禁止(労働者派遣法施行規則第18条の2)

企業は派遣契約締結前に、特定の派遣社員を指名することはできません。

 

<禁止される行為の例>

  • 「この人を派遣してください」と氏名を指定する
  • スキルシートに記載された候補者の中から、企業が個人を選ぶ
  • 以前派遣されていた社員を「同じ人でお願いします」と指定する

このルールの目的は、労働市場における公平性の確保 です。特定の人を指名することで、「派遣労働」が事実上の採用プロセス になってしまうことを防ぐためです。

 

(3)業務指示のルール(労働者派遣法第44条)

派遣社員の指揮命令権は派遣先企業にありますが、業務範囲を超えた指示を行うことは違法とされる場合があります。

 

<禁止される行為の例>

  • 契約書にない業務を指示する
  • 派遣社員に対し、勤務条件を変更するよう求める
  • 派遣会社を通さず、直接指示を出す

業務内容が変更となる場合は、派遣元と派遣契約の再締結が必要 です。

 

(4)直接雇用の誘引禁止(労働者派遣法第40条の6)

派遣契約中に、企業が派遣社員に直接雇用を持ちかけることは禁止されています。

 

<禁止される行為の例>

  • 派遣期間中に「正社員になりませんか?」と打診する
  • 派遣会社を通さず、派遣社員と個別に雇用契約を結ぶ
  • 派遣期間満了前に、別の雇用契約を用意する

派遣期間終了後であれば直接雇用は可能ですが、期間中に誘引すると派遣会社との契約違反になるため、注意が必要です。

 

2-2. 企業が特定行為を避けるために取るべき対応策

派遣の特定行為を防ぐために、企業は以下のポイントに注意しながら派遣社員を受け入れる必要があります。

 

(1)派遣契約の進め方を適正化する

派遣契約を結ぶ際は、氏名ではなく「業務内容」「必要なスキル」 をもとに派遣社員を決定するようにしましょう。

 

<適正な進め方のポイント>

 ✓ 求めるスキル・業務範囲を明確に定義する

 ✓ 派遣会社に対し、具体的な業務内容を伝える

 ✓ スキルシートを確認し、必要な要件を満たしているかチェックする

 

2)事前面接を行わず、派遣会社との協力体制を強化する

企業は、派遣会社が行う選考プロセスを尊重することが重要です。

 

<具体的な対策>

 ✓ 事前に派遣会社と要件をすり合わせる

✓面接ではなく、スキルシートや業務経験表をもとに判断する

 ✓ 万が一、スキルや適性が合わない場合は、派遣会社と協議し適正な方法で対処する

 

(3)社内教育とコンプライアンス遵守を徹底する

特定行為の禁止を守るためには、人事担当者や現場管理者に対する教育 も欠かせません。

 

<教育プログラムの例>

 ✓労働者派遣法の基本ルールを学ぶ研修を実施する

 ✓ 過去の違反事例を共有し、コンプライアンス意識を向上させる

 ✓ 派遣社員との適切な関わり方を明確にする

 

 

3. なぜ派遣の特定行為は禁止されているのか?

派遣の特定行為(事前面接の禁止、氏名の特定禁止など)が定められている背景には、派遣制度の趣旨 と直接雇用との違い があります。企業がこのルールを正しく理解していないと、意図せず法令違反を犯し、行政指導や事業停止命令などのリスク を負うことになります。

本章では、なぜ派遣の特定行為が禁止されているのかを、労働者派遣法の制度趣旨や違反時のリスク を交えて詳しく解説します。

 

3-1.労働者派遣制度の趣旨

労働者派遣制度は、企業の人材ニーズに対応しつつ、労働者の雇用機会を確保するための制度です。そのため、派遣社員の選定や雇用管理の責任は「派遣元(派遣会社)」にあり、「派遣先(企業)」は労働条件を決定する立場にはありません。

しかし、企業が事前面接を行い、派遣社員を選考するような形になると、実質的に「派遣」ではなく「直接雇用」に近い関係 になってしまいます。これにより、以下の問題が発生する可能性があります。

 

◆「派遣」が「非正規雇用の温床」になるリスク

企業が事実上の採用プロセスを行うことで、派遣が「安価な労働力確保の手段」として利用される危険性があります。これにより、以下のようなリスクがあります。

  • 労働市場において正社員と派遣社員の不公平が拡大する
  • 派遣会社の役割が形骸化する
  • 企業が直接選考を行うことで、派遣会社の人材マッチング機能が弱まる
  • 結果として、派遣労働市場全体の適正な運営が阻害される

このような背景から、派遣の特定行為は禁止されており、企業は派遣会社が行う人材マッチングを尊重する必要がある のです。

 

3-2. 直接雇用と派遣の違い

派遣と直接雇用の最大の違いは、雇用契約の主体 です。

雇用形態 正社員・契約社員(直接雇用) 派遣社員(労働者派遣)
雇用契約の主体 企業(派遣先)が直接雇用契約を結ぶ 派遣会社(派遣元)が雇用契約を結ぶ
指揮命令の関係 企業が直接指揮命令を行う 企業は業務指示のみ行い、雇用管理は派遣会社が担当
人材の選定方法 企業が採用試験や面接を実施 派遣会社が選定し、企業は面接せず受け入れる

 

企業が派遣社員を選考することは、労働者派遣制度の趣旨と矛盾するため、法律で禁止されているのです。

 

3-3. 企業が違反するとどうなる?(罰則・リスク)

派遣の特定行為に違反した場合、企業は行政処分や社会的信用の低下 などのリスクを負うことになります。以下に、具体的な罰則とリスクを解説します。

 

(1)行政指導・是正勧告(労働者派遣法第49条)

厚生労働省や労働局が監督指導を行い、違反が発覚した場合は是正勧告や指導 を受けることになります。

 

<行政指導の流れ>

労働局の監査により、派遣契約の内容がチェックされる

違反が確認された場合、是正指導 を受け、改善を求められる

企業が対応しない場合、指名公表やさらなる処分が行われる

 

(2)企業名の公表(労働者派遣法第51条)

改善が見られない場合や悪質な違反がある場合、企業名が公表 されることがあります。

 

<企業名公表の影響>

 ✓取引先や顧客からの信頼が低下する

 ✓ 派遣会社との契約解除のリスクが高まる

 ✓ 求人応募者からのイメージが悪化する

 

(3)派遣事業の停止命令(労働者派遣法第14条)

違反の程度が重い場合、企業は派遣事業の停止命令を受ける可能性があります。

 

<派遣事業停止のリスク>

 ✓派遣社員を新規に受け入れることができなくなる

 ✓ 既存の派遣社員との契約が解除される可能性がある

 ✓ 事業の継続に大きな影響を及ぼす

 

(4)契約トラブル・損害賠償請求の可能性

派遣契約に違反すると、派遣会社とのトラブルにつながる可能性があります。

 

<トラブル例>

 ✓派遣会社から契約解除を申し入れられる

 ✓ 違反による損害賠償を請求される可能性がある

 ✓ 違法行為を労働者に指摘され、訴訟リスクが発生する

 

3-4.企業が適正に派遣社員を受け入れるために

企業が派遣の特定行為に違反しないためには、以下のポイントを徹底することが重要です。

◆事前面接を行わない:企業はスキルシートや職務経歴書を確認し、面接を行わずに受け入れることが原則です。

◆派遣契約書の適正な運用: 契約締結時に、氏名ではなく「業務内容」を明確に記載し、派遣会社と適切な調整を行うことが重要です。

◆社内研修の実施: 派遣社員を受け入れる部署の管理者や人事担当者に対し、派遣法に関する教育を実施し、特定行為の禁止について周知徹底する。

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4. 違反しないための注意点と対策

派遣の特定行為に違反すると、企業は行政処分や派遣契約の解除、社会的信用の低下 などのリスクを負うことになります。しかし、派遣法のルールを正しく理解し、適切な対策を講じることで、これらのリスクを回避することが可能です。

 

4-1. 適切な派遣契約の進め方

派遣社員を受け入れる際に、事前面接を避けつつ、適切な人材を確保する方法 を知っておくことが重要です。企業は、以下の流れで派遣契約を進めることで、法令違反を防ぐことができます。

 

(1)求めるスキル・業務内容を明確にする

派遣会社に適切な人材を紹介してもらうためには、具体的な業務要件を明確にすることが不可欠 です。

 

<企業が事前に準備すべきポイント>

 ✓ 担当する業務の範囲を明確にする

 (例:「経理業務のうち、仕訳入力と請求書処理を担当」など)

 ✓必要なスキルや資格を具体的に記載する

 (例:「ExcelのVLOOKUP関数を使用できる」「日商簿記2級以上」など)

 ✓どの部署で勤務するのか、使用するシステムやツールを明確にする

 

このように、スキル基準を明確にすることで、適切な人材が派遣される可能性が高まり、事前面接を回避することができます。

 

(2)派遣会社との連携を強化する

派遣社員の選定は、派遣会社(派遣元)の役割です。企業(派遣先)が直接人材を選ぶのではなく、派遣会社としっかりコミュニケーションを取りながら、適切な人材配置を進めることが重要です。

 

<派遣会社と連携する際のポイント>

 ✓事前に派遣会社と打ち合わせを行い、求めるスキル・業務内容を共有する

 ✓ スキルシートを活用し、適性を判断する(ただし、氏名を特定しないように注意)

 ✓ 「業務に適さない場合は交代を依頼できる」という派遣契約の仕組みを理解しておく

派遣会社と適切に連携することで、事前面接を行わずに、企業の求める人材を確保することが可能になります。

 

(3)派遣契約の適正な運用

派遣契約を締結する際は、特定行為に違反しないよう、契約内容を適正に管理することが必要です。

 

<企業が注意すべき契約のポイント>

 ✓派遣契約書には、業務内容や勤務条件を明確に記載する

 ✓ 事前に派遣社員の氏名を特定しないように注意する

 ✓ 業務変更がある場合は、派遣会社を通じて契約内容を更新する

契約時に特定行為を回避することで、法令違反を防ぐことができます。

 

4-2. コンプライアンス対策の徹底

企業が特定行為に違反しないためには、社内のコンプライアンス意識を高めること が不可欠です。特に、人事担当者や現場の管理者が派遣法のルールを理解し、適切に運用することが重要です。

 

(1)社内研修の実施

派遣社員を受け入れる企業は、定期的に社内研修を行い、派遣法の遵守を徹底することが望ましいです。

 

<研修内容の例>

 ✓ 労働者派遣法の基本ルール(特定行為の禁止、派遣契約の適正化など)

 ✓ 違反事例とその影響(行政指導、企業名公表など)

 ✓ 派遣社員との適切な関わり方(指揮命令権の範囲、業務変更時の対応など)

このような研修を行うことで、現場レベルでの違反を防ぐことが可能になります。

 

(2)派遣法の最新情報をチェックする

労働者派遣法は、定期的に改正されるため、最新の情報を把握しておくことが重要 です。企業の人事担当者は、厚生労働省のガイドラインや派遣会社からの情報を適宜確認し、適正な運用を心がけましょう。

 

<派遣法の最新情報を得る方法>

 ✓厚生労働省の公式サイトを定期的に確認する

 ✓ 派遣会社が開催するセミナーや勉強会に参加する

 ✓ 社会保険労務士などの専門家に相談する

最新の法改正を踏まえた運用を行うことで、企業が適正に派遣社員を活用できるようになります。

 

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5. まとめ:企業が適正に派遣を利用するために

派遣社員を受け入れる企業は、労働者派遣法を遵守しながら、適切な人材活用を行うことが重要です。事前面接の禁止や氏名の特定禁止といったルールを守りつつ、派遣会社と連携し、適正な契約管理と社内教育を徹底すれば、法令違反を防ぎながら円滑な業務運営が可能になります。

派遣制度を正しく活用すれば、必要なスキルを持つ人材を適切に配置し、組織の生産性向上につなげることができます。コンプライアンスを意識しながら柔軟な働き方を取り入れ、企業と派遣社員双方にとって良い環境を整えていきましょう。

派遣の適正運用を進めることは、企業の信頼性を高め、より良い人材との出会いを生み出すチャンスにもなります。今後の企業運営において、派遣を戦略的に活用し、成長と発展につなげていきましょう。

 

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